籐家具ができるまで
「籐」について
「籐」は、英名をrattan(ラタン)といい、熱帯や亜熱帯に自生するヤシ科のつる性植物です。原産地は、アジア南部のインドネシア、マレーシア、ベトナムなど。日本では採れない100%輸入材です。
一見して竹だと思われる方が多いのですが、その性質は全く違います。竹は中が空洞ですが、籐は繊維層の集まり。強くてしなやか、そして軽いのが特徴です。原木は、表皮に長いトゲがあります。そのトゲを使い、他の高い樹木にまつわりつきながら太陽を求めて高く伸び上るように成長していきます。
種類は300種以上と多く、太さも約2ミリから6センチ以上にもなるものまでさまざま。またその長さは200メートルにも及ぶものがあるそうです。「地球上最長の植物」ともいわれています。
籐(ラタン)家具の特徴
籐家具の特長は、軽くて丈夫なこと、使うほどに体になじみ「味わい」が出てくること、そしてお手入れが簡単にできることです。丁寧に作られた籐椅子の背もたれなどは使っていくうちに程よいしなり具合で使う人の体にフィットします。
柔らかくて曲げやすい加工性に優れた籐は、複雑で微妙な曲線も自由にデザインすることができます。しなやかで滑らかなフォルムは機械などでは作り出せない上品でやさしい印象を与えます。
また、職人が一つ一つ丹念に手作りする籐家具には、作り手のやさしさや思いがこもります。愛着を感じて長く使ってくださる方が多いのは、職人のものづくりに対する姿勢が製品を通じて伝わるからでしょう。
製造工程「C-3160アームレスチェアのできるまで」
ワイ・エム・ケー長岡の製品は、すべて熟練の職人の手作りです。C-3160アームレスチェアは、1960年に初めて作られた時から変わらない製法で現在も生産を続けています。木取りから完成まで、3〜4日を要します。
1 木取り・切断
- 材料となる籐は主にフィリピンから品質のよいものだけを輸入しています。
- 太さ、硬さ、曲がり具合、色などが異なる豊富な材料の中から適材を選別し、使用部位に応じて切断します。
2 ため直し
- 籐は自然素材ですので、ゆがみ、曲がり、ねじれなどがあります。テコやため棒などを使って、矯正してまっすぐにします。
- 形成しやすくするためにボイラーの蒸気で蒸すこともあります。
3 曲げ
- 火で炙ったり、蒸したりしながら、籐を曲げて、各パーツを作っていきます。
4 整形
- 焦げ跡や傷をカンナやサンドペーパーをかけて表面を整えます。
- あらかじめパーツごとに作ってある三次元の型枠(治具)などを使って形を固定させます。
5 組み立て
- 各部材を釘や木ネジなどで組み立てて骨組み全体の形を整えます。入手しづらい太い直径のラタンを使用している為、安定感があります。
6 巻き
- 接合部の補強と釘や木ネジの目隠しを兼ねて、皮籐(ピール)を巻きます。
- 骨組みに縦方向に丸芯(丸籐の芯の部分)を巻き付け、座の部分に丸籐を取り付けます。
7 編み
- 中央の背の部分より、骨組みを目安に丁寧に手編みで編みこんでいきます。
- 湿らせて軟らかくした籐を使い、乾くことを想定しながら、デザインが求める微妙な曲線や風合いを作り出します。
- 編みこむにつれて孔雀の様な形になっていきます。
8 仕上げ
- 編み込みが終り、ささくれや細かい繊維をバーナーで焼き落とします。
- 養生、最終チェック後、仕上げに吹き付け塗装を施し完成です。
9 完成
1960年にホテルニュージャパンのラウンジの為にデザインされたC-3160アームレスチェア(通称ラウンジチェア)は、1964年ニューヨーク近代美術館(MoMA)の永久コレクションに、20世紀を代表するデザインとして加えられました。日本の家具では初めてのことです。この世界に誇る日本の名作C-3160アームレスチェアをデザインしたのが、日本そして世界を代表するインテリアデザイナー剣持勇氏。技術力・対応力・デザイン理解力を評価され、当社の前身である「山川ラタン」が製作を任されました。現在も製作を許されているのは、技術ノウハウと職人気質を持っている当社だけです。ワイ・エム・ケー長岡の代名詞と言える作品です。
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